キーンセンター所長からのご挨拶
「グローバル・ジャパン」イニシアティブ宣言
日本文化の重要性はこれまでかつてないほど高まっています。先進国、発展途上国を問わず、世界の国々の住人が、日本製の工業製品、ソフトウエア、そして日本発の具体的な実践と思想を通して、「日本」と日々接触しています。日本の存在は、いまや経済的効果に直接関わることなく国境を越えた現代文化に根深く浸透し、その要素は不可欠なものとなっています。サムライ、スシはもとより、アニメ、マンガといった多様な日本語が、世界の日常言語として使われていることからも明らかでしょう。
今日の日本は、地図上の境界を越えつつあります。21世紀において、「文化の東西」という言い回しは、もはや意味をなさなくなっています。物理的な距離があまり意味を持たなくなったグローバルな時代において世界がますます「ひとつ」になっていく中、隣人の文化に対するわずかな理解では私達自身とうてい満足することはできません。国境を軽々と飛び越えてしまう現代文化の担い手として、われわれはともに共通の未来を築いていかなくてはなりません。残念なことに今日でさえ、世代を超えた自文化中心主義と誤解がまかり通ることがあります。たとえばここアメリカでは、日本から押し寄せる多種多様な製品に対する好奇な眼差しは、それらの背後にある緻密な文化や歴史への親近感を上回ります。かといって、過去への知識だけでは不十分なのです。文化というものが、変化していくことをその条件にしている以上、文化の伝統と源泉を理解することのみならず、その現在形としての有り様、そして未来に変わりうるその姿を適切に了解することもまた重要なのです。
このような状況のなか、文化的施設が決定的な役割を果たすことは明白です。なぜなら、世界各地で行われる物質的および人的交流が、刻々とより顕著により複雑になるにしたがい、グローバル・カルチャーを享受する一般市民に対して、その歴史、現在の豊かさ、そして未来の可能性についてわかりやすくひも解く責任を担うからです。ドナルド・キーン日本文化センターとC.V.スター図書館は、この極めて重要な役割を常に目指してきました。私達は共に、日本および日本文化に関する様々な教育的活動を奉仕するシンクタンクとして、今後さらなる充実を図るべく新たなステージに立っています。私達は「グローバル・ジャパン
ー日本文化の過去、現在、そして未来ー」という新しいイニシアティブのもと、コロンビア大学の他にない充実した施設、教員、そして図書資料をひとつにして、日本文化をより多くの人々へそして新たな世代へと伝えてゆきます。
「グローバル・ジャパン」イニシアティブは、著名なコロンビア大学教授であり、日本の文化遺産の豊饒さを他の誰よりも世界中の人々に知らしめたそのひとでもある、ドナルド・キーン氏に捧げられるとともに、その仕事を受け継ぐものであります。ドナルド・キーン氏の記念すべき日本文学選集、Anthology
of Japanese
Literature(1955―1956年)が出版されて以来半世紀、日本への関心と見聞は世界中で嵩を増すばかりで、その功績は計り知れません。日本文化を伝える使命の先には、未開拓の分野が広がっています。私達の新規構想は、そのパイオニアの名に相応しいものとなるでしょう。キーンセンター創立20周年、英訳日本文学選集出版50周年、そしてドナルド・キーン氏の輝かしい偉業を称えるべく、ここに「グローバル・ジャパン」イニシアティブを宣言いたします。21世紀の日本により深いご理解とご関心を持たれる団体および個人の皆様から、幅広いご支援、ご賛同を承りますよう、よろしくお願い申し上げます。
グレゴリー・M・フルーグフェルダー
ドナルド・キーン日本文化センター所長
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